【科研費対応】NAS購入完全ガイド2026|10万円の壁・理由書テンプレ・DMP対応

最終更新: 2026年1月14日 | カテゴリ: データ管理・会計コンプライアンス

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JD-Juice Lab 編集部

研究機材調達・会計コンプライアンス専門

国立大学における10年以上の研究費管理経験を持つ専門家チーム。文部科学省ガイドラインに基づく適正な機材調達と、研究データマネジメントの実務に精通。

科研費実務経験10年 DMP策定支援 会計監査対応

「研究データをローカルPCだけに保存していて不安…」
「USBメモリでバックアップしているけど、いつか失くしそう…」
「科研費でNASを買いたいけど、会計規定が複雑でよくわからない…」

研究データの消失は取り返しがつきません。しかし、科研費でNASを購入しようとすると、「10万円の壁」「換金性の高い物品」「備品管理」など、複雑な会計規定に直面します。

本ガイドでは、文部科学省の「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」に準拠したコンプライアンス遵守型のNAS購入方法を徹底解説します。

🚨 研究者が抱える「三重の苦悩」
  • 会計検査への恐怖:不正使用や不適切な経理処理への監視が年々厳格化
  • 事務手続きの煩雑さ:10万円以上は備品登録、シール貼付、返還義務が発生
  • データ保全の責任:DMP(データマネジメントプラン)の義務化への対応

第1章:会計規定の完全攻略 ― 10万円の壁と「換金性の高い物品」の罠

科研費による物品購入において、最もクリティカルな分岐点は「取得価格」です。多くの大学・研究機関において、税込10万円が「消耗品」と「備品(資産)」を分ける境界線となっています。

📊 消耗品 vs 備品 比較表

項目 消耗品(10万円未満) 備品(10万円以上)
管理台帳 登録不要の場合が多い 必須(大学資産として登録)
現物確認 換金性が高い場合は対象 定期的な実査・棚卸が必須
ラベル貼付 不要(または簡易シール) 備品管理シールの貼付必須
研究終了後 そのまま使用可の場合が多い 返還義務が生じる可能性大
耐用年数 1年未満(または少額) 1年以上(減価償却対象)
⚠️ 「10万円未満なら安心」は誤解!

NASはPCやタブレットと並び「換金性の高い物品」として分類されます。消耗品扱いであっても、多くの大学では備品に準じた管理(管理シール貼付、設置場所登録、無作為の物品確認)が求められます。

「消耗品だからシールは貼っていない」「どこにあるか分からない」という回答は、監査時に横領を疑われる端緒となります。

📌 必ず確認すべきこと
  • 所属機関の「消耗品扱いとなる上限額」(10万円とは限らない)
  • 「換金性の高い物品」に関する独自の管理規定の有無
  • 研究終了時の物品返還ルール

第2章:監査で指摘される「危険パターン」 ― 知らずにやってしまうNG行為

実際の監査事例や不正防止啓発資料を分析すると、NAS購入に関連して指摘されやすい「危険なパターン」が浮かび上がってきます。研究者が悪意なく行ってしまうケースも多いため、事前のアラートが不可欠です。

🚨 危険パターン①:年度末の駆け込み購入

3月の駆け込み購入は極めてリスクが高い

監査側の論理:

  • 科研費は「その年度の研究遂行に必要な経費」を助成するもの
  • 年度末(3月10日納品)のNASは、当該年度の研究(残り20日間)にどれだけ寄与したのか?
  • 「余った予算を使い切るための買い溜め」と疑われる

対策:NAS導入は研究計画の初期〜中期に行う。年度末にやむを得ず購入する場合は、「当該年度に得られた膨大な実験データを、年度内に保全・整理完了するために不可欠」という緊急性のある理由書が必要。

🚨 危険パターン②:私的流用と家庭内設置の疑義

⚠️ 自宅設置は最も警戒される領域

リモートワークの普及に伴い「自宅にNASを設置したい」という要望が増えていますが、これは監査上最も警戒される領域です。

DLNA機能の罠:多くのコンシューマー向けNASには動画や音楽をTVに配信するDLNA(メディアサーバー)機能が搭載されています。監査時にこの機能が有効で、個人的な写真や動画が保存されていた場合、私的流用の決定的証拠となります。

正当化の条件:

  • 大学の研究室では実施不可能な理由(24時間監視が必要等)の明示
  • 物理的な管理体制(家族が触れない環境)の確保
  • 業務専用であることの誓約

🚨 危険パターン③:2年連続での同種物品購入

「2年続けて同様の物品を購入」した場合、「なぜ昨年度の機器では不足なのか」という説明が求められます。NASの場合、「容量が不足した」「研究プロジェクトが拡大した」など、具体的かつ定量的な理由を用意しておく必要があります。

第3章:購入理由書テンプレート ― 監査に耐える論理構築

科研費での購入には「研究遂行上の必然性」の説明が不可欠です。事務局や監査担当者は「なぜPCの内蔵HDDやUSB外付けHDDではダメなのか?」という視点で審査を行います。

📄 選定理由書テンプレート(そのままコピペ可)

【品名】ネットワーク対応型RAIDストレージシステム
(Synology DiskStation DS224+ および高耐久HDD 4TB×2)

【数量】1セット

【金額】○○○,○○○円(税込)

【選定理由】

本研究課題「○○(課題名)」において生成されるTB級の時系列画像データの多重化保全および共同研究者間のセキュアな共有のため、以下の理由によりNASを選定した。

①データ保全性:
本研究のデータは再現困難な観測記録であり、PC単体の故障による消失を防ぐため、RAID1(ミラーリング)による冗長化が必須である。USBメモリや外付けHDDでは自動バックアップ機能がなく、データ消失リスクが回避できない。

②共有の即時性:
遠隔地の共同研究者(分担者A、B)と日次で解析結果を同期する必要があり、USBメモリ等の物理媒体での受渡はセキュリティリスクおよびタイムラグの観点で不適当である。

③DMP遵守:
本研究のデータマネジメントプランに基づき、アクセスログの取得と10年間のデータ保持が義務付けられており、これらに対応した専用機器が必要である。

④セキュリティ:
機密性の高い未発表データであるため、外部クラウドサービスの利用はセキュリティポリシー上制限される。研究室内ネットワークで安全に管理できるNASが最適解である。

【備考】
価格は本体+HDD込み。消耗品枠(10万円未満)を超えるため備品として申請。

✅ 理由書の論理構築のポイント
  • 「容量が必要」ではなく「保全性(RAID)」を強調
  • 「便利だから」ではなく「データ消失リスクの回避(=研究成果の保護)」
  • 「DMP遵守のために必要」は近年のJSPS方針と合致し、強力な説得材料
  • 代替手段(USB、クラウド)の不適格性を明示

第4章:DMP対応とNASの役割 ― JSPS様式A-18への完全対応

2024年度以降、科研費の申請・採択においてデータマネジメントプラン(DMP)の策定と実施が実質的な必須事項へとシフトしています。NASは、このDMPにおいて「データの保存場所」および「共有・公開の制御装置」としての役割を担う中核的コンポーネントです。

JSPS様式A-18「研究データ保存場所」の記述例

📝 DMP記述例(NAS活用)

「取得・収集する研究データ(実験画像、観測ログ等)は、研究室内に設置したRAID構成のNAS(ネットワーク接続ストレージ)に保存し、定期的な自動バックアップを行うことで消失防止を図る。また、アクセス権限を設定し、研究分担者間でのセキュアな共有環境を構築する。」

データ公開区分とNASの役割

公開区分 定義 NASの役割
公開(Public) 誰でもアクセス可能 公開前の準備ステージ → 機関リポジトリへ転送
限定公開 共同研究者間でのみ共有 ⭐ NASの主戦場。VPNやクラウド連携で安全に共有
非公開 機密・特許申請前データ インターネットから遮断、暗号化ボリューム使用
📌 3-2-1ルールの実装

データ保全の基本である「3つのデータコピーを、2つの異なる媒体に、1つはオフサイト(遠隔地)に」という3-2-1ルールを、NASとクラウドストレージ同期機能(Synology Cloud Sync / QNAP HybridMount)を組み合わせることで自動化できます。これはDMPにおける「不測の事態への対策」の強力な回答となります。

第5章:監査証跡と技術要件 ― ログ機能とデータ整合性

会計監査とDMPの両方の要件を満たすためには、家庭用の安価なNASでは機能不足となる可能性が高いです。研究用NASに求められる技術的要件を解説します。

🔍 監査証跡(Audit Logs):身を守るための必須機能

監査においては「不正使用がないこと」の証明が求められます。これを客観的に行う唯一の手段が「ログ」です。

📋 必要なログの種類
  • アクセスログ:「誰が」「いつ」「どのファイル」「何をしたか」の記録
  • 接続ログ:どのIPアドレスからログインしたか
  • システムイベントログ:電源のオンオフ、HDDの抜き差し等の履歴

重要:これらのログを長期間(研究期間+数年)保存し、CSV等でエクスポートして監査資料として提出できる機能が必要です。

🛡️ データ整合性(Btrfsファイルシステム)

DMPでは10年単位のデータ保存が求められますが、HDD等の磁気記録媒体は長期間放置するとビット反転(Bit Rot)を起こし、データが静かに破損するリスクがあります。

✅ Btrfsファイルシステムの優位性
  • メタデータとデータ本体の両方にチェックサム(ハッシュ値)を持つ
  • 読み出し時に自動的に整合性を検証
  • ミラーリング(RAID 1など)されていれば、破損検知時に自動修復(Self-healing)を実行

⚙️ RAIDレベルの選定

RAID 最小HDD数 特徴 推奨用途
RAID 0 2本 高速だが1台故障で全データ消失 研究用としては論外
RAID 1 2本 ミラーリング。1本故障しても継続 ⭐ 小規模研究室に最適
RAID 5 3本 容量効率良い。1本故障まで対応 中規模データ
RAID 6 4本 2本故障まで対応。高信頼 大規模・重要データ
⚠️ RAIDはバックアップではない

RAIDはHDD故障への耐性を高めるものですが、誤操作やランサムウェアからは守れません。NAS + 別媒体(外付けHDD/クラウド)への二重バックアップを推奨します。

第6章:推奨NAS機種比較 ― Synology / QNAP / Buffalo

前章までの要件(コンプライアンス対応、DMP対応、技術的堅牢性)に基づき、主要NAS製品を比較分析します。

📊 メーカー別適性評価

評価項目 Synology QNAP Buffalo
監査ログ機能
Btrfs対応 ×
スナップショット
操作性
価格 やや高め コスパ良好 安価
調達容易性
10万円以下構成可
Synology DS224+
⭐ 研究用NASのデファクトスタンダード
約56,000円〜
本体のみ(HDD別売)
CPU Intel Celeron J4125
メモリ 2GB DDR4(増設可)
ベイ数 2ベイ(RAID 1対応)
ファイルシステム Btrfs対応
  • ✅ Log Centerアプリで詳細なアクセスログ取得・エクスポート可能
  • ✅ Btrfsによる自動データ整合性チェック・自己修復
  • ✅ 直感的なDSM(DiskStation Manager)で初心者でも管理しやすい
  • ⚠️ 4TB HDD×2を加えると約9〜10万円(消耗品ギリギリ)
確実に10万円以下
QNAP TS-233
コストパフォーマンス重視の若手研究者向け
約26,000円〜
本体のみ(HDD別売)
CPU ARM Cortex-A55
メモリ 2GB DDR4
ベイ数 2ベイ(RAID 1対応)
特徴 NPU搭載
  • ✅ 本体+HDD込みでも確実に10万円以下(消耗品範囲)
  • ✅ QuLog Centerでアクセスログ管理可能
  • ✅ スナップショット機能でランサムウェア対策
  • ⚠️ 設定項目が多く、初心者にはやや難解
3万円台〜
Buffalo LinkStation LS220D
調達容易・バックアップ専用向け
約30,000円〜
HDD組込済
HDD容量 2TB〜8TB
ベイ数 2ベイ(RAID 1対応)
調達先 大学生協で購入可
セットアップ 簡単
  • ✅ 圧倒的な安さと導入の手軽さ
  • ✅ 大学生協や出入り業者で最も購入しやすい
  • ⚠️ 詳細なアクセスログ機能が弱い
  • ⚠️ Btrfs非対応(長期保存には注意)
  • 📌 推奨用途:メインNASの二次バックアップ先として

参考リンク(LinkSwitch対応)

第7章:導入後の運用ガイド ― ログ設定・物理管理・研究終了後の処理

適切な機器を購入しても、運用設定が不備であれば監査リスクは解消されません。納品後に行うべき具体的な設定と、日常の管理ルーチンについて解説します。

📋 Step 1:監査ログ機能の有効化

Synologyの場合

パッケージセンターから「Log Center」をインストール → 「ログ設定」で「ローカルログのアーカイブ」を有効化 → SMB/AFP/File Stationのファイル転送ログを全て記録対象に設定

QNAPの場合

「QuLog Center」を開く → イベントログおよびアクセスログの保持期間を設定(推奨:無期限または十分な容量を割り当て)

📋 Step 2:物理的管理とラベリング

⚠️ 必須の物理管理
  • 管理シールの貼付:大学から支給されるバーコード付きシール等は、本体正面の目立つ位置に貼付(「デザインが損なわれる」は理由にならない)
  • 台帳との整合性:設置場所(部屋番号)を台帳に正確に記載。移動時は速やかに変更届を提出
  • 持ち出しルールの遵守:自宅等へ持ち出す際は必ず「物品持ち出し届」を提出し許可を得る

📋 Step 3:研究終了後の処理

研究プロジェクトが終了しNASを廃棄または譲渡する場合、DMPの最終フェーズとしてデータ消去が必要です。

📌 Secure Eraseの実施
  • 単なるフォーマットではなく、ディスク全体にランダムデータを書き込んで復元不可能にする
  • Synology/QNAP共に「Secure Erase」機能を搭載
  • 消去完了画面のスクリーンショットやログを保存し、事務局に提出

よくある質問(FAQ)

科研費でNASは購入できますか?
はい、科研費でNASを購入できます。ただし、10万円以上の場合は「備品」扱いとなり、資産管理シールの貼付や台帳登録が義務付けられます。また、換金性の高い物品として10万円未満でも厳格な管理が求められる場合があります。
NASとクラウドストレージ、どちらが科研費で適していますか?
NASは初期費用は高いですが継続課金がなく、機密データを外部に出さずに済むため、科研費での購入に適しています。クラウドは月額課金のため複数年度にわたる経費処理が複雑になる場合があります。
10万円未満のNASなら消耗品として購入できますか?
金額的には消耗品扱いになりますが、NASは「換金性の高い物品」に該当するため、多くの大学では10万円未満でも備品に準じた管理(管理シール貼付、設置場所の登録)が求められます。必ず所属機関の規定を確認してください。
データマネジメントプラン(DMP)にNASはどう記載すればよいですか?
JSPS様式A-18の「研究データ保存場所」欄に「RAIDによる冗長化および定期バックアップ機能を有するNAS」と記述します。「限定公開」データの保存先として位置づけることで、DMPの質が向上します。
研究用NASで最も重要な機能は何ですか?
監査対応のための「アクセスログ機能」と、長期データ保全のための「Btrfsファイルシステム対応」が最重要です。これらにより、研究目的での使用を客観的に証明し、Bit Rot(ビット腐敗)からデータを保護できます。

まとめ ― 科研費NAS導入チェックリスト

✅ 購入前チェック
  • □ 所属機関の「消耗品/備品」の境界額を確認した
  • □ 「換金性の高い物品」の管理規定を確認した
  • □ 購入理由書を作成した(DMP遵守を明記)
  • □ 購入時期は年度初期〜中期である
✅ 機種選定チェック
  • □ アクセスログ機能がある(Synology Log Center / QNAP QuLog)
  • □ Btrfsファイルシステムに対応している
  • □ RAID 1以上の冗長性が確保できる
  • □ 予算内に収まる(10万円未満 or 備品扱いを了承)
✅ 導入後チェック
  • □ 管理シールを本体に貼付した
  • □ 設置場所を台帳に登録した
  • □ アクセスログ機能を有効化した
  • □ 二重バックアップ(外付けHDD/クラウド)を設定した

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